読みものcolumn

【わたしの家事問屋 vol.8】わたしの正解は、わたしが決める。家事問屋の道具を並べるためのキッチンづくり

文/藤沢あかり


設計から素材選び、作り手による加工や仕上げまで、さまざまな思いと技術を込めてつくられる家事問屋の製品。でも、製品としての完成はゴールではありません。ほんとうの始まりは、使い手に「わたしの道具」と感じてもらってからです。

この読み物では、家事問屋を生活に取り入れている方々に、アイテムを選んだ理由や使い勝手をうかがいます。家事問屋の製品は、暮らしのなかでどのように活躍しているのでしょうか。

まるでショールーム。道具がいつでも見えるキッチン

「使いたいと思ったそのタイミングで、すぐ手に取れる。しまいこむのではなく、お気に入りの道具やうつわを置くだけで景色になる。そんなキッチンを作りたかったんです」

その言葉通り、ずらりと並ぶキッチンツールや保存容器、そして日常のうつわ。ここにあるのはすべて、日々の暮らしに欠かせない道具ばかりです。

開発やブランディング、イベント出店など「食」を軸に活動する「寧巣-nesu(ねす)」を主宰する蒲原ひかりさん。以前はカフェを併設したライフスタイルショップで、メニュー開発や調理、さらには接客まで幅広く担当していました。

「キッチンはわたしの日常そのものであり、暮らしの中心です。
すっきりとしたキッチンや便利な収納システムも魅力的ですが、わたしは道具を使いたいタイミングで、すぐ手に取れるようにしておきたいタイプ。引き出しも開けっぱなしにしてしまうこともあるし、道具を出し入れする手間も省きたい。

だから家づくりのときには、“自分が使いやすく、快適であること”を一番に考えました。誰かが決めた収納システムや使い勝手に沿うのではなく、正解を自分で決めるようなキッチンを作ろうと決めたんです」

かごや行李を引き出し代わりに活用し、食材や細々したものをまとめています。

正解を自分で決める。そうしてたどり着いたのが、必要な機能だけを残した、フレーム構造のシンプルなキッチン。まさに蒲原さんが思い描いていたものでした。

「毎日使う食器は、作業台下のオープン棚に。バットやザルなどの調理器具も、同じ棚に並べています。正面のツール掛けには、味噌こしや茹でわけザル、おたま、フライ返しなど、毎日使うものを引っ掛けています」

よく見ると、その多くが家事問屋のアイテム。蒲原さんは笑って「うちのキッチンは、家事問屋のショールームです」と話してくれました。

「以前働いていたお店でも扱っていましたし、カフェの調理場でも実際に使っていました。でもいちばんは、毎日使ったうえで『自分の手にしっくりなじむ』という実感ですね。

クチコミ評価がどんなに高くても、かならず自分の手で試して納得したものを使いたい。洋服と同じです。道具は毎日使うものですから、理屈ではなく自分の手に合うかどうかという『実感』や『感覚』を大切にしています」

いつでも、どこでも。ゴミ箱がもっと自由に

たくさんの道具のなかでも、いま特にお気に入りだというのが「ゴミ袋ホルダー」です。

「わが家では、各部屋にゴミ箱を置いていません。ゴミ箱は一気に生活感がでるし、掃除や袋の交換の手間も増えてしまうので。
そこで発想を変え、ゴミが出るところに、このゴミ袋ホルダーを持っていって使うようにしました」

たとえば、娘さんが洗面所で髪をセットするとき。以前は落ちた髪が気になっていたそうですが、いまはホルダーを一緒に持っていけば、サッと捨てられてストレスフリーに。

「調理中はこの上で直接皮剥きをすれば捨てやすいし、食卓に持って行くこともできます。

袋の交換も簡単で、本体自体もシンプルで目立ちにくい。しかも丸洗いができ衛生的、もう手放せません」

自分好みに道具を組み合わせたアレンジ

続いて紹介してくれたのは、「この組み合わせが便利です!」と大プッシュの2アイテム。「スタッキングザル用角バット」と「スタッキングザル」です。

「グリークヨーグルトにハマって、毎日のように作っています。いわゆる水切りヨーグルトですが、この2つを使うと大きさもちょうどよく簡単に作れますよ。

夜、寝る前にザルにヨーグルトを入れて冷蔵庫へ。朝、バットに溜まった水を切って、また冷蔵庫でしばらく休ませて、夕方くらいにもう一度水を切ります。ザルでいい具合に水分が抜けて、その日の夜にはもちもち、ふわふわのグリークヨーグルトが完成です。
いちごのコンポートや金柑のはちみつ漬けなど、季節やその日の気分で味を変えながら楽しんでいます。

お肉や魚のドリップを落とすのにもぴったりです。塩麹に漬けた状態でザルに上げて冷蔵庫に入れておけば、味がなじみながら余分な水分だけ落とせます。
夜、寝る前に凍ったお肉を入れておくと、解凍後のドリップが気にならず、朝のお弁当づくりもスムーズです」

シンプルだからこそ叶う、オールマイティーに使える道具

この家に引っ越してきて、特に重宝しているのが『洗い桶』です。食洗機を使うようになり、毎日の食器洗いのスタイルにも変化が生まれたといいます。

「シンクも広くなり、使いやすくなりました。食洗機を回すのは1日1回まわすので、それまではこの洗い桶に浸けておき、1日の終わりに洗います。
ただ、食洗機を使うほどの量かどうか迷うときってありませんか? わが家では家族3人分の食器が、洗い桶の中に食器すべて収まるくらいなら手洗い。あふれたら食洗機、という基準をつくったことで迷わなくなりました。

シンクと同じステンレスだから見た目もすっきりだし、使わないときは立てておけるのも便利です」

さらに洗い桶として以外にも、蒲原さんらしい活用法も。

「このあたりは農家さんも多く、野菜をたくさんいただくことも多いです。うちも庭で畑をつくっているので、大量のきゅうりを塩水に漬けたり、白菜を洗って漬物にしたり。きゅうりは板ずりしたあと、一度ゆがいてから水に浸けるとシャキシャキになりますよ。

水抜きの穴があるのも便利ですよね。ステンレスならしっかり洗えて清潔だし、大きなボウルのような感覚で使っています。

家族みんなで、料理を楽しめるキッチンへ

この家に引っ越してきてすぐ、蒲原さんは家族にキッチン道具のレクチャーをしたそうです。

「あんべらや味見スプーン、マッシャーや柑橘皮むきなどの小さなツール類は、まとめて作業台に立てています。だから、瓶のジャムをすくいたいときはこれが便利、味見のときはこれ……と、使い方をひと通り紹介しました。

道具を使いこなせると、ちいさな不便がなくなって台所仕事がぐんと楽しくなります。いまでは夫も子どもも積極的にキッチンに立つようになり、結果的にわたしもラクに。自分でつくるよろこびを知ってもらえるのがうれしいです」

手を動かし、自分で食べるものを作ること。ちいさな不便を取り除きながら、すこしずつ暮らしを豊かに変えていくこと。

道具ひとつから、家族の明日が変わっていく。そんなよろこびを、蒲原さんはこのキッチンで味わっています。

読みもの登場製品

ゴミ袋ホルダー

価格:2,200円(税込)

スタッキングザル用角バット

価格:1,320円(税込)

スタッキングザル

価格:1,210円(税込)

立つ洗い桶

価格:5,940円(税込)

あんベラ

価格:550円(税込)

味見スプーン

価格:880円(税込)

マッシャー

価格:1,430円(税込)

柑橘皮むき

価格:1,760円(税込)

pagetop