読みものcolumn

【ニイガタ便り】第3話:新米収穫。米農家に聞く、おいしいお米のある暮らし

文/松永 春香


金属加工品の産地、新潟・燕三条。家事問屋はこの地に「産地問屋」として生まれ、つくり手(工場)と共に歩んできました。

新潟は、海、山、川に囲まれた自然豊かな土地で、夏は暑く冬は雪に閉ざされる。四季の変化がはっきりした風土で、金属加工以外にもさまざまな魅力溢れるものがあります。

この読みものでは、そんな「わたしたちの好きな新潟」を発信していきます。家事問屋が、少しでも新潟の魅力をつなぐ存在になれたらうれしいです。

新潟といえば、お米やお酒のイメージを持たれる方も多いのではないでしょうか。
家事問屋のある燕市は、新潟県でも有数の穀物地帯が広がる越後平野の真ん中に位置しています。

信濃川から流れる支流から稲を育て、春の田植え、秋の収穫、自然の恵みを活かして米農家は日々、お米の栽培に向き合っています。

今回、家事問屋スタッフの岩谷が、新潟県を代表するブランド米「コシヒカリ」をはじめ、酒米や、ここでしか作られない幻の古代米、紫黒米「紫宝(しほう)」の栽培をしている米農家、アイベクターinc.の長谷川治さんを訪ね、新米収穫や米作りについてお話を伺いました。

▲米農家の長谷川さん(右)と息子さん(左)

米どころ新潟。豊穣の秋の収穫へ

春先にはツバメが舞い、秋から冬にかけてシラサギが田んぼに残った米や土の中の虫を食べる燕市の田園風景。

米どころ新潟の中でも、燕市らしい四季折々の景観が日常にあります。

―燕市の米作りにはどんな特徴がありますか?

650町もの耕地面積がある燕市の田んぼには、中之口川から引いた清らかな水が流れ、おいしい米が育ちます。昔から洪水被害の多かったこの地域は、横田切れによって土壌が少し違うのも特徴。私が米作りを行っている小池地区は肥沃な土地が広がっています。

―長谷川さんが作っているお米の品種は何種類ありますか?

現在は、コシヒカリ、いのちの壱、五百万石(酒米)、紫宝(紫黒米)の4種類です。作付面積9町2反のうち、7町は田んぼに直接種をまく直播栽培を行っています。

※一反(読み方:いったん)、一町(読み方:いっちょう)とは、面積をあらわす農業用語の単位です。一反は、1,000m2、坪の広さは300坪。一町(読み方:いっちょう)は、一反の10倍の広さです。

約30年前から直播栽培をするようになって、苗を育てる手間と田植えをする手間が省けるようになりました。化学合成農薬や化学肥料を5割以上減らして作られた農産物だけが認証を受けられる「新潟県特別栽培農産物認証制度」にも取り組んでおります。

―新米のできはいかがですか?

2023年は日照り続きで大変でした。50年以上米作りをしていますが、これほどの猛暑は初めてです。燕市の米作りでは水が枯れることはありませんが、日中で35℃以上、夜になっても30℃以上の日が続きましたから、稲も疲れている印象です。

人間と一緒で、稲も自力で体力を維持しようとするもの。実は小さくなり、もみ殻も厚くなっていました。紫黒米の色付きが悪く、ここまで黒くならない年は初めてです。

▲スタッフ岩谷が米の収穫を初めて体験
▲稲を刈り込みながら緊張感がはしる
▲刈り取った稲をコンバインからトラックに移す

出会いと試行錯誤で生まれた、こだわりの米づくり

―農薬や化学肥料を極力使わず、どのように米作りを行っているのでしょうか?

米は土と水、使用する肥料などと稲の生育に寄り添った管理で味が決まります。うちで作った米には「アクアライス」という商標をつけています。

これは健全な稲体を作るために、ミネラル水「サンミネラル」や活性水、病害虫の予防も期待される木酢液など色々な水を年2回流し込み、出穂後は葉面散布しています。

そのようにしていると、宝石のアクアマリンのように澄んできれいな米になるので、アクアライスと名付けました。

肥料には、フェザーミール、魚かす、植物性の油かす、加里などを発酵させた「味好特号」、新潟県産米ぬかから作られた「元気ゆうき君」、「越つかの酒造」の酒かすなどを活用し有機肥料のみで栽培しています。

2023年からは、田んぼの雑草を抑制するロボット「アイガモロボ」を導入しました。アイガモのように水田の水をかき混ぜることで泥水状態になり、太陽光を遮ることで、除草剤を使わずに雑草が生えにくい状態にできます。

化学肥料や殺菌殺虫剤、除草剤に出来るだけ頼らない米作りが私のこだわりです。

―とても手間ひまをかけて作られていますね。作り手としては苦労も多いのでは?

どうしても作物には虫の被害があります。虫に食べられてしまった米は色彩選別機で飛ばしています。臭いのきつい木酢の活用も害虫対策に一役買っているかもしれません。

▲色彩選別機。未熟米や茶色米、虫食い米を選別していく

―いのちの壱と紫宝は、どんな品種ですか?

いのちの壱は、コシヒカリの突然変異の品種で、コシヒカリの2倍以上ある大きな粒でありながら、炊いた時にもっちり柔らかく、冷めてもおいしいのが特徴です。

▲コシヒカリより2倍以上の粒の「いのちの壱」(右)

紫黒米の紫宝(しほう)は全国でも新潟県でしか栽培ができない珍しい品種。ポリフェノールの一種であるアントシアニン、カルシウム、カリウム、鉄分、ビタミンを多く含むスーパーフードとしても親しまれています。黒米の栽培自体は30年位前から続けてきましたが、紫宝の栽培を始めたのは7年ほど前から。もち米特有のもちもちの食感を、白米3合に紫宝を大さじ1混ぜて炊くだけで、手軽に味わえます。

▲黒米は除草剤を使っていないので雑草が生い茂っている

―良質な水、土、肥料から作られる米は栄養満点ですね。

たくさんの出会いがあって今の米作りにたどり着きました。「越つかの酒造」の酒かすを米作りに活用するようになったのは、2020年。近くの篤農家さんづてに、酒蔵さんから五百万石の栽培を打診され、同時に酒かすも散布しました。翌年からはコシヒカリにも全耕地に散布しました。人の人生も、人の縁・出会いによって大きく変わると思いますが米作りも一緒です。

▲肥料に酒かすを使用する栽培にも挑戦

「地域」と「米づくり」商品開発への提供

―「HIENプロジェクト」はどのように始まったのでしょうか?

農家、新潟県、燕市、新潟県農業総合研究所、新潟大学フードサイエンスセンターなど、産官学が連携して取り組んだ6次産業化プロジェクトです。

「HIENプロジェクト」の始まりは2015年。燕商工会議所が中心となり、燕市で「お土産に選ばれる特産品を作ろう」と取り組んできました。燕市で作られている農産物といえば米が中心。そこで、30年ほど黒米を作ってきた私に声が掛かりました。

黒米栽培は、農家にとって厳しい状況が続く中で「儲かるかな」という気持ちと「体にも良さそう」と思い、始めたものでした。まさか燕市を代表する特産品として活用されるとは思ってもみませんでした。

―「HIENプロジェクト」ではどのような商品が完成しましたか?

「美と健康」をコンセプトに、お菓子のラスク、黒米シュークリームも開発されました。ブランディング、マーケティングのプロも参加したプロジェクトから、おいしさだけでなく見た目にも喜ばれる商品が完成したと思います。「HIENプロジェクト」をきっかけに、紫宝のおいしさ、燕市の米作りの技術力が多くの人に伝えられたらうれしいです。

―紫黒米は地元の学校給食でも提供されたそうですね。

燕市の給食で紫黒米を生徒さんたちに召し上がっていただきました。たくさんの子どもが喜んで食べてくれて、そのあと紫黒米を買いに訪れる親御さんがたくさんいらっしゃったくらいです。

▲地域の学校給食へ提供もおこなった

最近では、製麵所さんと一緒に「紫宝米粉麺」の商品化も進めています。ご飯としてはもちろん、お菓子や麺料理など、加工しやすいのも紫宝の魅力です。

有機米だからこそ玄米で食べてほしい

―普段の食事ではお米をどのように食べていますか?

米の栄養素を無駄なく食べられるように玄米を食べています。食事を気遣うようになってからは、玄米に紫宝を混ぜて食べるのが我が家の定番。その効果もあってか、病気をすることなく、体調もとてもいい。米を食べるならぜひ玄米で味わっていただきたいというのは米農家の本音ですね。

―白米では栄養素が取れないのでしょうか?

もみ殻だけを取り除いた玄米と違い、白米はビタミンやミネラルを豊富に含むぬか層や胚芽が除去されています。玄米を精米する際に削ぎ落とされてしまう米ぬかは、米粒の10%程度でありながら、この部分だけで米が持つ栄養素を90%以上も含んでいるので、積極的に食べることをおすすめします。

米ぬかは、ぬか漬けを作る以外にも、生ぬかを炒って料理に加えて食べることもできる万能な食材。米ぬかの活用は白米好きな方でも米の栄養素を満遍なく摂取することができるので挑戦してみてください。食味がいいだけでなく、体が喜ぶ栄養素も毎日の食事で補うことができますよ。

▲米ぬかは、体が喜ぶ栄養素がたっぷり

田んぼにミネラル水や活性水をまき、良質な有機肥料をたっぷり使用することで健康的でおいしい米作りを実践されている長谷川さん。

日々自然と共存しながら田んぼを守っています。誇りを持って稲を育て「おいしいお米を食べてもらいたい」という努力と工夫の姿と向き合えたことで、ご飯が食べられることが当たり前でないことに気づきました。

そろそろ、スタッフ岩谷が収穫した新米が家事問屋へ届きます。
今年の収穫に感謝して「いただきます」

「アイベクターinc.」さんの新米2キロを、3名様にプレゼント

取材にご協力いただきました「アイベクターinc. 」さんの新米 (新潟コシヒカリ) 2キロを、抽選で3名様にプレゼントいたします。新潟の農家さんが心を込めてつくった新米を産地直送便でお届け。皆さまからのご応募、お待ちしております。


■応募方法
1、「お問い合わせフォームにて、必須項目を入力してください
2、「お問い合わせ内容」の欄に【新米プレゼント応募】と入力してください
3、「送信する」をクリックで応募完了

■応募期間
2023年10月16日(月)10:00 ~ 10月22日(日)23:59まで

■応募条件
メールでやり取りしていただける方

■賞品
新米(新潟コシヒカリ)2キロ

■当選人数
3名

■当選者発表方法
・当選者の方には10月25日(水)までにメールにてご連絡を差し上げます。
・当選連絡後、期日までにご返信をいただけなかった場合は当選が無効となります。
・賞品は10月下旬の発送を予定しております。(お届け日指定不可)


〈取材協力〉
アイベクターinc.
住所:燕市杉柳817
電話番号:0256-64-2718
商品サイト(HIEN):http://hien.niigata.jp/

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