読みものcolumn

【ニイガタ便り】第6話:「干しかご」で楽しむ、干し物づくり

文/金子 美貴子


「干す」ことで、保存性、栄養価、美味しさがアップ!

皆さん、干し物をどれくらい食べていますか?

干し物は、冷蔵庫のない時代、貴重な食糧を長期保存するために生まれた生活の知恵ですが、水分を飛ばすことで甘みやうま味が凝縮されたり、太陽の光でビタミンDが生成されて栄養価がアップしたりと、うれしいことがいっぱいです。

いざという時にも、長期保存の利く干し物のストックがあれば安心ですよね。

皆さんも美味しい旬の野菜で、干し物づくりにチャレンジしてみませんか?

干し物をもっと身近に。家事問屋から「干しかご」が登場

メリットいっぱいの干し物の魅力をもっと味わっていただきたいと、家事問屋では新製品「干しかご」をつくりました。(公式サイト・取扱店舗にて10月より順次発売)

干しかご 2段

価格:7,700円(税込)

干しかご 3段

価格:9,900円(税込)

細かい網目のステンレス製で、虫やゴミが付くのを防ぎ、野菜や果物を手軽に干すことができます。

そこで今回は、「干しかご」を使って干し物づくりをより楽しんでいただけるよう、自家栽培の野菜を使った乾燥野菜と漬物をつくっている新潟県新潟市の岩﨑食品さんに干し物づくりのコツを伺いました。

岩﨑食品の設立は、ちょうど30年前の1994年のこと。岩﨑召子さんが、作り手が少なくなっていく郷土の味「からし巻」を地域の特産品として後世に伝えようと立ち上げました。

▲岩﨑食品の岩﨑召子さん

からし巻とは、戻した干し大根にからしを塗って巻いた漬物のこと。越後平野の農村集落だったこの地域では、かつてそれぞれの家庭が独自のやり方で仕込み、田植えの時期に皆で食するごちそうの一つだったといいます。

▲切り干し大根に一枚一枚からしを塗って巻いていく。ピリッとした辛みと絶妙な歯ごたえがやみつきに

現在は孫の修さん、博子さんご夫婦が、召子さんの想いと事業を受け継ぎ、自家栽培の大根や柿といった自社製品以外に、ニンジンやゴボウなどのドライ加工も請け負っています。

おすすめの野菜と、失敗しない干し方のコツ

野菜や果物は干すことによって保存性が高まり、甘みやうま味が凝縮され、素材によっては天日干しすることで高まる栄養素もあるということはよく知られています。

「食感も変わりますね。特に大根でいえば、生の大根と干し大根は、全く別のものですし、干し大根にしかない味わい、食感は唯一無二です。戻し汁も最高の出汁になるので、味噌汁やスープの具材にもオススメです」と修さん。

博子さんは、干し大根を洋食に活用することが多いのだとか。
「干し大根は肉料理との相性が抜群なんです。挽き肉に混ぜると、干し大根特有の甘みやうま味の相乗効果に加えて、適度な歯ごたえもあるのですごくおいしいですよ。子どもたちはあまり気づかずにモリモリ食べてくれるので、栄養バランスを考えていつもたっぷり入れています。ハンバーグ、餃子、麻婆豆腐など何でも合いますが、私のイチオシはキーマカレーです」

▲カットした切り干し大根入りのキーマカレー。切り干し大根の歯ごたえがアクセントに

これからの季節に干すのに適した野菜は、王道の大根のほか、ニンジン、ゴボウ、タマネギなどの根菜類。

大根なら厚さは5ミリ程度、ニンジンは皮をむいて千切りに、ゴボウはささがき、玉ネギは輪切りに。もちろんトマトやナスなど、短期間に大量に収穫できる夏野菜も干しておくと便利です。意外なところでは、タマネギの皮。

「洗って干したものを煮出すと、いい出汁が出るんです。捨てるのはもったいないですよ。長ネギは、斜めにカットしたり、刻んだりしておけば、生と同様に使えて便利です。根菜類の干し物は、煮物類やスープ、お味噌汁はもちろん、炊き込みご飯にしてもうま味が出て美味しいです」と修さん。

フルーツでは、今の季節にイチオシなのが梨。

「梨は水分が多いので干すイメージがないかもしれませんが、すごくおいしいです。甘みが凝縮して、生の瑞々しさとは違う美味しさがあります。ブドウは半分にカット、イチジクはくし切りに、サツマイモはふかした後に皮をむいてから干します」

キウイやイチゴは、干すことでかえって甘みが飛び、酸味が際立つそうなので、ご注意を。

そして、上手に干すためのポイントとして大切なのは「風」。

▲自家栽培の畑にて。できるだけ隙間を作るように並べるのがコツ

「カビや腐敗を防ぐには、風通しのいい場所に干すことが大切です。ガレージなどの閉塞した空間は適しません。軒下などは最適ですね。ただ、屋外の場合は天気に注意が必要です。湿気は大敵なので、晴れた日が続きそうなタイミングで一気に乾燥させましょう。

夜露、朝露が付いたりしないように、日が暮れたら室内に取り込むと安心です。また、密集していると風の通りが悪くなるので、並べるときはできるだけ重ならないように気を付けます。どうしても中央部分は乾きが遅くなるので、乾き具合を見て、並べ方や位置を変えたりするといいですね」

菌が繁殖しにくい冬場や、風のある春先は干し野菜が作りやすい季節なのだとか。

「乾燥前の下処理も重要です」と博子さん。

「土が残っているとカビの原因になるので、しっかりと洗います。皮には栄養分が多いですが、皮はむいておくと間違いないですね。どうしても土が入ってしまう窪みの部分は、丁寧にくり抜きます。雑菌がつかないよう、手袋をはめて作業するのがおすすめです」

初心者は、できるだけ細く、薄く、細かく、表面積が広くなるようにカットして、少量から始めると失敗が少なそうです。

家事問屋の「干しかご」で干し物づくりを楽しんでみませんか

岩﨑食品さんから教わったコツに従い、早速「干しかご」を使って干し野菜づくりにチャレンジ。

半端に余ってしまった使いかけの野菜を干すと、気持ちよく食材が使い切れます。

くだものは水分が多いのでセミドライにするのもおすすめ。

丁寧に洗い、カットした野菜とフルーツを干しかごにセット。風通しを意識して、間隔を広めにとって並べていきます。

岩﨑さんファミリーに教えていただいたコツを押さえて、待つこと3~4日ほど。
初めての干し物づくりに無事成功することができました!

▲3日干した「切り干し大根」
▲片面2日、裏返して2日干した「さつまいも」
▲3日干した「オレンジ」。オレンジは輪切りにして表面積を広げます
▲写真上から「リンゴ」「パイナップル」「きゅうり」それぞれ3日干しました。しっかり乾燥した食材は密閉容器や袋にいれて保存。セミドライで水分がまだ残っている場合は、生の野菜と同じく冷蔵庫で保存するのがおすすめです

自然の力を借りて自分で作った干し物の、シンプルながら滋味深い味わいは格別!
市販の干し物は少々お高いものも多いですが、自分でつくれば経済的なのもうれしいポイントです。

「次は何を干してみようかな?」

手軽に干し物が楽しめる「干しかご」で、小さな楽しみが増えますように。




古くから伝わる暮らしの知恵が生んだ干し物。
保存性、栄養価、おいしさがグンとアップするだけでなく、料理の幅も広がります。

地域の気候風土や季節、その日の気温や吊るす場所、素材の種類や切り方、並べ方によって、仕上がりはさまざまです。

シンプルだけど奥深い、干し物づくり。一期一会の美味しさに出会う楽しみがそこにはありました。

ぜひ、干しかご生活を楽しんでみてくださいね。


〈取材協力〉
岩﨑食品
住所:新潟県新潟市西蒲区松野尾13
https://www.iwasaki-shokuhin.jp

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