読みものcolumn

【ニイガタ便り】第4話:伝えたい新潟の味。郷土料理「のっぺ」

金属加工品の産地、新潟・燕三条。家事問屋はこの地に「産地問屋」として生まれ、つくり手(工場)と共に歩んできました。

新潟は、海、山、川に囲まれた自然豊かな土地で、夏は暑く冬は雪に閉ざされる。四季の変化がはっきりした風土で、金属加工以外にもさまざまな魅力溢れるものがあります。

この読みものでは、そんな「わたしたちの好きな新潟」を発信していきます。家事問屋が、少しでも新潟の魅力をつなぐ存在になれたらうれしいです。

今回ご紹介するのは、新潟の郷土料理として親しまれる「のっぺ」
新潟県民にとってはお正月や冠婚葬祭でもなじみ深い定番の料理です。

のっぺの作り方や調理のポイントについて、日本食生活協会認定の「郷土料理スペシャリスト」として講師の育成や食育活動を行っている外山迪子さんにお話を伺いました。

外山さんは、2014(平成26)年栄養関係功労者厚生労働大臣表彰、2019(令和元)年には旭日双光章を受賞された、郷土料理の伝道師。

どのような思いで活動を続けてこられたのかも気になります。

食の大切さを本、料理教室、食育活動から提案

現在、郷土料理の料理教室、子ども食堂など、さまざまな食に関わる活動を行っている外山さん。実は食一筋という経歴ではなく、国立音楽大学卒業後、高校の音楽教師や子どもたちの音楽教室の講師をしていたそうです。

「音楽大学に受からなかったら栄養学を学びたかった」と話すほど、昔から料理が大好きだったと言います。

―食に興味を持ったのはいつ頃ですか?

小さい頃から食べることが大好きでした。

母はデコレーションケーキを自宅で作ったり、ローストチキンを一羽丸々焼いてくれたり。アップルパイ、プリンなどのお菓子もよく作ってくれる、料理好きな人でした。

「料理はお母さんが手作りしてくれる」、そんな食生活が当たり前だと思っていました。

社会人になって子育てが始まり、息子の友達のお母さんが開催する料理教室に参加したことから、食への興味が増しました。

食事は体をつくる大切な栄養源。子どもたちに健康的な食事を提供したいと思ったことが、今の活動の原点です。

―食育活動を始めたきっかけは?

食の洋風化やコンビニエンスストアの出現などで食事の変化に意識を持ちました。
手軽に食べられるファストフードは便利だけれど、食品添加物を多く含み、健康には良くない食事だと考えています。

今までに多くの食育活動をしてきた中で、食べることや「家庭で作って食べること」の大切さや意義を伝えてきました。

最近は社会情勢の多様化でとても便利になり「買って食べる」事が多くなってきています。そのような背景から包丁を使わないで「我が家の食事」が出来る時代です。

2023年10月に行われた新潟市の米の文化や郷土料理をテーマとした「食の文化フォーラム」の中で郷土料理を伝えていく難しさを訴えかけました。

―『家庭食 いのち輝く 応援レシピ』を出版されたのはなぜですか?

昔から料理が好きで、よく友人を招いて食事会をしていました。

周囲から「私も食べてみたい」「行ってもいい?」と声を掛けられるようになり、頻繁に食事会をしていました。その中の一人から「教えてください」と言われ、突然料理教室を始める事になりました。

そして、このおいしさをもっと多くの人に伝えたいと完成したのが『家庭食 いのち輝く 応援レシピ』です。

根菜たっぷり!新潟の郷土料理「のっぺ」

©未来へ伝えたい日本の伝統料理 秋の料理 株式会社小峰書店

―新潟の郷土料理「のっぺ」とは?

「のっぺ」と呼ばれる料理は、新潟だけでなく全国各地で食べられていますが、しょうゆベースで根菜が中心で鮭文化があり、鮭やいくら(トト豆)を入れるのが「新潟のっぺ」の特徴です。

新潟県内でも、上中下越のエリアによって具材の切り方が違いますし、また行事によっても違ってきます。家庭によっても少しずつ味わいが違いますね。

一般的な具材は、里いも、ごぼう、にんじんなど。新潟県では、冷めると臭みが出やすい大根は入れませんね。

私のレシピではごぼうは入れずれんこんを入れることもあります。

―根菜がたっぷり使用されていますね。

冬になると雪深くなる新潟では、保存の利く根菜が重宝されてきました。身近な食材を使う、先人たちが生み出した食生活の知恵が生きる料理です。

▲新潟の「のっぺ」は里いもで自然なとろみを付けるのが特徴

全国各地にある「のっぺ」ですが、2007(平成19)年「全国郷土料理百選」に新潟県の郷土料理「のっぺ」が選ばれました。 新潟のっぺは全国ののっぺ、のっぺい汁とは違い汁物というより煮物。「越後のっぺ」とも呼ばれています。

「のっぺといえば新潟」と言われるようになったきっかけとも言えるでしょうね。

新潟県内だけで見てみても、村上市では大海(だいかい)、長岡市や県央地域を中心におおびら・おひらと呼ばれるなど、地域によっていろんな呼び方、具材があります。

©にいがたのおかず 開港舎

西の文化が根付く佐渡では、煮物は作るけれど「のっぺ」とは呼ばないところもおもしろいですよね。

―かまぼこが入るのはお正月だけでしょうか?

私は普段入れないけれど、彩りとしてかまぼこを入れた方が見た目は良くなりますよ。
あとは仕上げにいくらや鮭をのせると、お祝いごとにぴったりです。

―料理教室で「のっぺ」を作った時の生徒さんたちの反応は?

難しいと思っていた「のっぺ」がこんなに簡単に出来るとは思わなかった。「だし水」の出汁がおいしく上品な味など、感嘆の声が聞かれました。

教室に参加の人から「食卓が変わった!」と喜んでもらっています。

のっぺはお祝いの時、人が集まる時、通年いつでも作れるおすすめの料理です。

外山さん考案の「だし水」が味の決め手

―根菜の他にものっぺに欠かせないものはありますか?

和食というと出汁を取るのが難しいと言われてしまいますが、本でも紹介している「だし水」を使うと、簡単においしい和食が作れます。1回作ってみると、思わずはまっちゃうほどおいしいですよ。

作り方は、容器に水1ℓと煮干し30g、昆布10gを入れるだけ。冷蔵庫で2~3日放っておくだけでおいしい出し汁になります。

―かつお節は入らないんですね。

かつお節は香りはいいけれど私は煮物には合わないような気がしています。濾すのが面倒に感じ、またビタミン・ミネラル・鉄・亜鉛・銅などの微量栄養素があまりないのも気になるところ。

微量栄養素を含む煮干しやアゴ出汁、アジが入るとおいしくて健康的にもいいと思います。

具材を切って、本に書いてある通りの分量で、蓋を閉めてタイマーをかけておけば、それだけでずっと鍋を見ていなくても出来ちゃいます。

―分量を守ることが大切なんですね。

分量は鉄則!そこを守れば寝ていてもできますよ(笑)。

―だし水は他の料理にも流用できますか?

どんなお料理にも使えるのはもちろん、塩分控えめにも貢献してくれます。料理教室でも大人気です。

季節問わず食べたい「新潟のっぺ」の作り方

『家庭食 いのち輝く 応援レシピ』にも掲載された、外山さん流「新潟のっぺ」の作り方を教えていただきました。

材料(4人分)

里いも…中4個(240g)
にんじん…1/4本(50g)
こんにゃく…40g
たけのこ…30g
れんこん…40g
干ししいたけ…4枚
かまぼこ…30g
だし水…2カップ(400cc)

調味料

塩…小さじ1/3
しょうゆ・みりん・酒…各大さじ2
絹さや・いくら…適量

作り方

❶最初に、里いもとにんじんを乱切りにします。こんにゃくは小さめの一口大に切り、下ゆで。たけのことれんこんも同様の大きさに切ります。

❷干ししいたけは水で戻して軸を取り、一口大にカット。かまぼこは他の材料に合わせた大きさに切りましょう。

❸材料を全て切り終えたら、鍋にだし水、にんじん、たけのこ、干ししいたけ、こんにゃくを入れて10分ほど煮ます。この時、干ししいたけの戻し水150ccを加えるとより風味が良くなります。

❹にんじんに火が通ったら、調味料と里いも、れんこんを加え、材料が柔らかくなるまで煮ましょう。

❺かまぼこを入れて、さらに火を通します。

❻絹さやは下ゆでしておき、斜め細切りに。器に盛り付けて絹さや、いくらを散らしたら完成です。

盛り付ける器に決まりはありません。

平碗や深さのある陶器、夏に食べたい「冷やしのっぺ」なら、ガラスの器で涼しげに盛り付けてみるのもおすすめです。

のっぺは季節を問わず楽しめる料理

―長時間煮込まなくてもおいしくできるなんて!驚きました。

だし水を使うことで、のっぺが嘘みたいに簡単に出来上がりますよ。朝晩と忙しいお母さんにこそ作ってみてほしいです。

―毎日の料理を楽しむヒントはありますか?

全ての献立を作らなくてもいいんです。

以前、講演会で聞いた事がありますが「焼き魚やコロッケ、刺し身などの主菜は買ってきていいけれど、副菜はうちで作るといいよ」というもの。

「全部手作りしなきゃいけない」と気負わなくてもいいのです。

ただ、最近メディアでも紹介されることが多い冷凍野菜は、解凍の仕方を間違えると栄養素が抜けてしまうことも。

正しい栄養素の知識を身に付けつつ、時には手を抜きながら料理を楽しめるといいですね。

―のっぺは最高の煮物料理ですね。

そうなんです。ちょっと盛り方を変えるだけでおもてなしになります。季節の食材を取り入れながら、ぜひ作ってみてください。

―外山さんの食への想い、多くの方に広めたいですね。

本を出して終わりではなく、実際に料理を食べてもらえる機会を増やしていきたいと考えています。

最近は、三条市内の子ども食堂と地域のご高齢の方々にも食事を提供しているのですが、「ここのごはんはおいしい」と褒めてもらって。励みになっています。

変わった食材を使った流行りの料理ではなく、近くのスーパーで買った身近な食材で作る昔ながらの料理ばかりです。これからもたくさんの方に提供していきたいです。

『家庭食 いのち輝く 応援レシピ』

外山迪子(著)

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