開発ストーリー「小バケツが生まれるまで」

忙しい毎日を送る働き盛り世代や共働きのご家庭、それからご高齢の方まで、今ではお掃除ロボットやハンディ掃除機で、お掃除の負担を減らしている方も多いのではないでしょうか。
それでも窓拭きやちょっとした水拭きの機会はなくならないもの。そんな時に必要になるのがバケツですが、いざ使いたい時には物入れと化してしまっていたり、大きすぎて持ち運びが不便だったりしませんか?
お掃除の必需品を、もっと手軽に使えるようにしたのが「小バケツ」です。

容量は一般的な家庭用バケツの約半分というコンパクトサイズ。頑丈で錆びにくいステンレス製ながら、約520グラムと軽量のため持ち運びやすく、さまざまなシーンで活躍してくれます。
一枚板から作る継ぎ目のない形で水漏れの心配もなく、洗いやすく清潔を保ちやすいのもポイントです。
何より特徴的なのは、直接火にかけられること。IHコンロにも対応しており、バケツのまま煮沸消毒を行うことができ、漬け置き洗い用のぬるま湯づくりなども簡単です。
今回は、2025年新製品の中でも特に人気の高い「小バケツ」の開発ストーリーをお届けします。
目次
「重いし水がハネる!」年末の大掃除のストレスからの着想

「小バケツ」の開発を担当したのは、結婚を機に東京からIターンで中途入社をした清水。「ゴミ袋ホルダー」「揚げ物トング」の開発も行っています。
まず自分自身が「これは欲しい!」と思えるものであることが企画の根幹であるという清水。
子どものころから家事全般をする機会が多かったという豊富な経験が、彼の開発のベースになっています。
「年末の大掃除で私は窓拭き担当なのですが、2階にバケツを持っていく時に、重いし、水はこぼれるしで、何気にストレスだなって気づいたんですよね」
一家に一つは大きなバケツがあるものですが、一般的なバケツの容量は8リットルほど。収納スペースも取るため、バケツ自体が物入れと化していて、使いたいときにサッと取り出せなかったり、「ちょっと大きすぎるな」と結局洗面台を行き来したり、風呂桶で代用したり…なんてことも。
「もっと持ち運びやすくて、使いやすいサイズのバケツがあったら便利だな、と思ったのが最初のきっかけでした」

また、家事問屋として調理道具以外の製品も拡充していきたいと考えていたタイミングでもありました。
「『洗濯板』や『煮沸トング』のような洗濯・掃除ジャンルのラインとしてもいいだろうな」
そんな発想から始まった清水の開発は、思いもかけない広がりを見せていくのでした。
一枚板で作り上げる継ぎ目のないスッキリとしたデザイン

一般的なバケツはプラスチックやトタン製で、別パーツになっている側面と底面を溶接した造りのものが多いですが、家事問屋の製品ならやはりステンレス製。
「溶接による継ぎ目のないつくりにするのはマストと考えました。継ぎ目がないことでより耐久性が高まり、水漏れの心配もなくなります。また、バケツ自体が洗いやすく清潔に保てることでお手入れの手間が減って、より快適に使えると思いました」
そこで、ステンレスの一枚板の加工に定評のある池田物産に相談。家事問屋の「システムバット」を製造いただいています。

「池田物産ならではの一枚板の加工技術を応用してバケツを作れないか、という相談は、調理道具を専門としている先方からは驚かれましたが快諾いただきました(笑)。
まずはハンドルが付いていない鍋のサンプルを何種類か作ってもらい、『バケツとして使いやすい形状』を模索しました。製造方法は鍋と同じですし、容量も似通っているので、鍋のように見えないことにもこだわりました」
池田物産ではもともと鍋ややかんを製造しているため、ガス・IH両方のコンロ対応も問題ない。加熱できることが売りになるのでは、との考えは、実は開発過程で生まれたものでした。
「社内で話をしてみたところ、他スタッフ達から『バケツを直接コンロにかけられるのはすごくいい!』とかなりの好反応で、手ごたえを感じました煮沸消毒や漬け置き用のぬるま湯づくりも、火にかけられることで、これ一つで完結できます。
家事問屋の『煮沸トング』や『洗濯板』とも一緒に使えますし、このバケツが加わることで、使うシーンが明快になるという相乗効果も期待できると感じました」

容器の形状や深さなども順調に決まり、開発はスムーズに進んでいきましたが、思わぬところで難航することに。
「ハンドルの部分です。形状次第では、いろり鍋のような雰囲気になってしまうため、ちゃんとバケツに見え、扱いやすくて手に取りたくなるデザインというのが意外と難しかったんです。
掛け金の角度もかなり研究しましたし、ハンドルを寝かせた時にバケツの縁にきれいに沿うよう、最後の最後まで微調整をしました。

ここだけでも10回以上サンプル作成を行いましたね。7割がたスムーズに来たのに、最後の3割がめちゃくちゃ大変だったのは想定外でした(笑)」

ハンドルの部分で苦戦したのも、使い勝手の良さと家事時間の気分を上げてくれるデザインへのこだわりから。
こうしてテーブルやキッチンの上に置いてあっても違和感のない、納得のいく「小バケツ」が完成したのでした。

直接火にかけて煮沸消毒もできる、使いやすいミニマムサイズ

手軽に使えて、小ぶりなサイズ感で誕生した「小バケツ」。
容量は約2.5リットルで、本体も約520グラムと軽量。ハンドルも握りやすく、水を入れた状態でも難なく持ち歩けます。
継ぎ目のないステンレス製で、水漏れや錆びの心配はありません。
そして最大の特徴は、なんといっても火にかけられること。
直火・IHコンロの両方に対応しており、このまま火にかけての煮沸消毒が可能です。ふきんの煮沸消毒を調理用の鍋で行うことに抵抗を感じる人もこれなら問題ありません。
漬け置き洗いや粉せっけんを溶かすぬるま湯づくりなども簡単。1リットル、2リットルの目盛り付きなので、洗剤を入れた溶液も作りやすいです。

バケツの隅に汚れが溜まることもなく、洗いやすいのもポイント。ステンレス製で匂いも付きにくいです。
丈夫なステンレス製だから、屋外でのちょっとした道具類の持ち運びも安心。家庭菜園でかごやボウル代わりに収穫物を入れたり、冷蔵庫で保存しない野菜を一時置きしたりするのもおすすめ。そのまま水洗いもできて便利です。

一人何役もこなしてくれる使い勝手とコンパクトでタフな造りは、BBQやキャンプのお供にもぴったりです。
キッチンやランドリールーム、浴室など室内の各所から屋外・野外と、活躍の場所を選ばないのも「小バケツ」の特徴ですね。

作り手と使い手にとっての「ちょうどいい」を探す

ものづくりで重視していることは、「作り手、使い手にとっての“ちょうどいい”バランスを見つけること」と清水は言います。
「“ありそうでなかった”製品づくりを目指すとなると、メーカーさんに新しいことに挑戦してもらう、ということがたくさんあります。ただ、私たちはブーム的に大きく売れることよりも、細く永く売れ続けることを前提としているので、メーカーさんに大きなリスクを負わせることはしたくありません。
一定の向上心がないと緩やかな衰退につながってしまいますが、つま先立ちをするような限界ギリギリの背伸びをしてもどこかで無理が来てしまいます。
また使い手さんからの多様なご意見も大切にしていますが、私たちが目指しているのは“1人からの120点”よりも、“10人からの90点”をいただける製品なんです。『いくらでも絶対欲しい!』という1人のために作るのではなく、より多くの人に満足していただける落としどころを見極める。それこそが永く愛されるものづくりには欠かせないと思っています」
何をどこまでこだわるべきか。その答えも、きっと時代の変化と共に変わっていきます。
家事問屋は、作り手と使い手にとっての“ちょうどいい”を常に模索しながら、これからもよりよいものづくりを続けていきます。

コンパクトで使いやすく、収納場所にも困らないステンレス製の「小バケツ」。
バケツなのに煮沸ができて、掃除にも園芸にも、多方面で活躍してくれます。
気づいたら、暮らしに欠かせない相棒になっているかもしれません。 ちょっと面倒な家事時間が、このバケツで少しでも快適になりますように。

読みもの登場製品

小バケツ
価格:4,950円(税込)












