開発ストーリー「調理リングが生まれるまで」

文/金子 美貴子
忙しい朝のお弁当づくりや、疲れた帰宅後の夕食づくり。できるだけ効率的に作りたいですよね。ワンパターンになりがちなメニューや盛りつけにも、時には変化がほしいものです。
そんな時に便利なのが、2024年11月発売の新製品「調理リング」。
一つのフライパンで、2種類以上の調理ができるお助けアイテムです。
熱に強いステンレス製だから、フライパン調理も安心。
まん丸の目玉焼きづくり、転がりやすいソーセージの囲い、おにぎりの成形など、形に応じてさまざまな使い方ができます。
フッ素加工でホットケーキなども型に付きづらく、盛り付けも片付けもスマートに。
調理中に扱いやすい取っ手は、吊り下げ収納にも便利です。
今回は、時短がかなうだけでなく、メニューの幅もグンと広がる「調理リング」の開発ストーリーをお届けします。
目次
「時短」を切り口に実現した開発デビュー作

「調理リング」を開発したのは、2020年に中途入社した県外出身の岩谷。高校卒業後、新潟で進学し、そのまま就職。前職では異業種の営業職で、製品開発は未経験でした。
入社後、「横口ボウルザルセット」のミニサイズの開発など、既存製品をベースに開発経験を積んできた岩谷が、初めてイチから企画したオリジナル製品第1号がこの「調理リング」です。
「僕自身はあまり家で料理をしないのですが、朝の情報番組などで常にトレンドはチェックしていて、昨今のニーズとして欠かせない『時短』というキーワードは常に頭の中にありました」
あるとき、フランス料理などでよく使われる円筒形の型「セルクル」と、2品以上の同時調理ができる仕切り付きフライパンが、「時短」というキーワードでつながりました。

「ただ、仕切り付きのフライパンは普通に調理したいときに使いづらく、そのうち戸棚の奥で眠ってしまいがち。セルクルは加熱調理で使うときに生地がくっつかないように油を塗ったりクッキングシートを添わせたりする手間がかかりますし、フライパンでは扱いづらい。
必要な時に手持ちのフライパンで仕切りとしても活用できて、 一般的なセルクルよりも使いやすい型があれば便利ではないか、とひらめきました」
一つのフライパンの中でも複数のおかずが混じり合うことなく、同時進行で作ることができる。きれいな丸い目玉焼きを手軽に作ることができれば、月見バーガーや、ガパオライスなんかにも使えそう。お子さんと一緒に小さいパンケーキを作ったりしても楽しいかも……。

想像が膨らんだ岩谷は、早速企画に着手しました。
ステンレス×フッ素加工という強みが壁に
早速、類似品を集め、形や大きさ、素材などの研究をスタートした岩谷。使い手の生の声も集めます。
「シリコン製の類似製品を使われている方の口コミを見ると、『しばらく使わなかったら劣化してしまった』『おにぎりづくり等で押し固めたいときに、素材が柔らかいため変形してしまう』等の声がちらほら。お弁当づくりなどで毎日のように使っていただいて長く愛用していただきたいものなので、耐久性は大前提でした」

シリコンはやわらかいのでフライパンの表面を傷つけにくいという利点もありますが、もちろんデメリットもあります。
「そこで、本体は頑丈なステンレス製にして、型離れが良くなるフッ素樹脂加工を考えました。これで類似品と差別化できるという手ごたえがありました」

しかし、ここで問題が浮上。ステンレスのリングを得意とする工場に相談したところ、「うちではフッ素樹脂加工をするのが難しい」とまさかのお断り。高温でフッ素を吹き付けるため、どうしてもわずかにステンレスがゆがんでしまうとのことでした。
それから他の工場を何件かあたり、やっていただける工場を見つけました。
「いろいろと検討していただき、グレードの高いフッ素を採用し、厚いステンレス材に塗装することで本体のゆがみを抑えることに成功しました。ただ、ステンレスが厚くなればその分重くなりますし、値段も上がってしまうので、ゆがみが生じないギリギリの厚さを追求していただきました」

時短を助ける「仕切り」にも、使い勝手のいい3種類の形
丸、四角、三角の3種類の形も特徴的な「調理リング」ですが、当初考えていたのは丸型と四角の2種類のみでした。
「ある日、社内の打ち合わせで『三角形を追加しては?』とアドバイスをもらいました。三角形を入れて並べてみると、遊び心も感じられるし、用途のイメージがさらに広がりました。展示会で『かわいい』というお声をいただいたのも、三角形が加わったことが大きいと思います」

3種類の「調理リング」は直径24~26cmのフライパンに、同時に3つ置くことができ、三角型を加えたことで、おにぎりの成型にもおすすめできるようになりました。


「特にフライパンでの調理作業は高温になるので、調理中でも扱いやすく使いやすさにもこだわりました。フライパンに蓋をしても収まりが良い高さ、つかみやすい持ち手の角度も何度も検討を重ねました」

少しでもより良い製品、愛される製品にできるようにと取り組んだ、岩谷にとって初となる一からの企画開発。工場の方々や、社内の先輩スタッフたちのサポートを得ながら、無事に商品化へとこぎつけたのでした。
伝統の技術を現代のニーズに合わせて機能させる

県外出身の岩谷にとって、燕三条は見知らぬ土地でした。しかし、ここで暮らし、工場の人々と接する中で、少しずつ根を張れているといいます。
「職人気質でストレートな人が多い印象です。この地域特有の気風に慣れ親しんで、知識も増えていくうちに、少しずつ工場の方々と近い距離感で接することができるようになりました。
自分の希望に固執するのではなく、工場の方が勧めてくれる方法や、各工場が置かれている立場や状況などを踏まえ、先方が少しでもやりやすい方法などを柔軟に取り入れるようにしています」
産地の担い手の一人としての自覚とともに、産地への想いも育ってきました。
「この産地の技術は、伝統文化といってもいいものだと思います。伝統文化には、よくも悪くも『変わらない』という一面があり、だからこそ守られてきたものがあると思います。
でも、次世代に伝えていくためには、現代のニーズに則していかなくてはいけません。
この産地においても、昔ながらの技術という伝統を大事にしながら、『現代の求める機能』というニーズに応えられるよう、伝統が昇華することで、時代がどれだけ進んでも金物加工の産地として頼られるような地域になっていけばよいと思います。
そのために、いろいろな技術の進化やトレンド、ライフスタイルの変化などを敏感にキャッチしていきたいです」
家事問屋メンバーの中でも若手の岩谷。これからも彼らしいフレッシュな発想でチームを活性化してくれることでしょう。

時短できる同時調理や、料理の成形に便利な家事問屋の「調理リング」。
ステンレス製だから、熱に強く、耐久性も抜群。食材がこびりつきづらいフッ素加工で、加熱調理時も洗うときもストレスフリーです。
普段使いのフライパンで2品以上の調理を同時進行できるから、忙しい朝のお弁当づくりにも大活躍。
丸、三角、四角の3種類の形が、単調になりがちなメニューや盛り付けのバリエーションを広げてくれます。
見た目もかわいらしい「調理リング」が、日々の料理を少しでも効率的に、楽しいものにしてくれますように。
読みもの登場製品

調理リング 丸
価格:2,090円(税込)

調理リング 三角
価格:2,090円(税込)

調理リング 四角
価格:2,090円(税込)