読みものcolumn

開発ストーリー「穴あきターナーが生まれるまで」

文/金子 美貴子


家事問屋の数ある調理道具の中でも人気を誇る「穴あきターナー

やわらかい素材のため、フッ素加工のフライパンでも安心です。小ぶりなサイズ感と穴あき構造によって、炒め物や攪拌にも便利に使えます。

吊り下げ収納でも、インテリアの雰囲気を損なわないデザインにもこだわりました。

今回は、大人気製品「てつまろ」の開発も手掛けた担当者が「穴あきターナー」を製品化するまでの開発ストーリーをご紹介します。

「もう少し、小さいのがあったらいいのに」

穴あきターナーを開発したのは、新潟県三条市出身。入社して6年程になる30代女性です(以下、担当者)。前職はフォトグラファーという異色の経歴の持ち主で、「てつまろ」の開発者でもあります。

彼女が料理を始めたきっかけは、デザインを専攻していた大学時代に北欧デザインのうつわを集め始め、ある日ふと「あ、お皿に載せるものを作らないと!」と気づいたことだそうです。

それからは、お気に入りのうつわに美しく盛り付けた料理を写真に収めることが習慣に。

「形にすることが好きです。撮影も製品開発も、私の中では同じ『ものづくり』ですね」

彼女は日々の生活の中に開発の種があるといいます。

「自炊をする際、市販のターナー(フライ返し)はちょっと大きいなと感じていました。一人分の料理には持て余す感じで、収納もかさばります。家事問屋の製品のラインナップにターナーがなかったこともあり、毎日使える小さめのターナーを開発しよう、と決めました」

どうしたら毎日使えるターナーにできるだろう。研究と試行錯誤の日々が始まりました。

機能性の追求から生まれた、穴のあいたデザイン

小ぶりのサイズにすること以外に担当者が最初から決めていたのは、へラ部分を樹脂製にすること。

「今でこそ一生モノとして鉄フライパンを愛用していますが、当社に入社するまでは、手入れの簡単なフッ素加工のフライパンを使っていました。忙しい日々を送る効率重視の方にも選んでもらえるものにしたいと思いました」

樹脂製のターナーを集めて実際に使って使い心地を確かめ、機能の優先順位を検討。

▲最適なしなり具合を求めて、樹脂に含むガラス繊維の量を変えて試作を重ねた

「ターナーとして、素材の下に入れやすく、すくいやすいよう、薄くて適度にしなることにもこだわりました。ただ、薄くしすぎると強度が下がるので、ギリギリのラインを追求しました」

▲薄さと強度のバランスを模索

市場にあふれている類似製品との差別化のポイントになるような、見た目の大きな特徴もほしい。そう考えていた彼女にヒントを与えてくれたのは、穴あき木べらでした。

「それまで穴の役割なんて考えたこともなかったのですが、調べていくうちに、攪拌しやすくするためにあるということを知りました。そこで、ターナーにも穴を空けることにしました。でも、バタービーターのような形状だと、狭い隙間にものが詰まりやすくて、とにかく洗いにくい。毎日のように使ってもらえるものにしたかったので、洗いやすさも考えて、大きな穴を一つだけ開けることにしました」

吊り下げ収納でもインテリアの邪魔をしないデザインにもこだわり、その穴が他製品にない大きな特徴となりました。

「だいぶ変わった形になったので、お客様に受け入れていただけるか正直心配でしたが、市場にない、自分がほしかった製品を作り上げることができました」

▲使いやすさを叶えるため、何度もサイズや形状を検討。幅6.5cmの小ぶりなサイズを実現した

ストレスフリーな使い心地で、小回りの利く優れもの

穴あきターナーは直径26cm以下のフライパンでも使いやすいのが特徴です。

「何度もさまざまな料理を作って、使いやすさを検証しました。ひっくり返しやすいから、ハンバーグやオムレツ、皮がくっついて破れやすい餃子もスムーズにお皿へ移せます」

「混ぜる」「成形する」「ひっくり返す」がこれ一つで完結するから、玉子焼きづくりも菜箸いらず。

▲玉子焼きにも絶妙にフィット

「大きな穴を開けよう」と決めていましたが、しなりの負荷に耐えられ、小さな鍋でも撹拌しやすいようにするため穴の幅感や形は悩みました。

▲穴が大きいので、かき混ぜにも便利
▲カーブに沿ってしなるので、小さなフライパンでも使いやすい

「一度出したら売り続ける」に込められた想い

ものづくりにかける想いはあるけれど、製品開発は日々勉強の担当者。

「最初の頃は、協力工場とお話しても、何を言っているかよくわかりませんでした。専門用語も難しくて(笑)。それでもみなさん優しくて、聞けば丁寧に教えてくださいました」

経験を積む中で、「一度出したら売り続ける」という家事問屋の姿勢も深く理解できるようになったといいます。

「私たちの製品を作るために、協力工場が新しいパートさんなどを雇い入れて対応してくださることがあります。製品の継続について私たちが決められることではないことも多いですが、少なくとも自社で運営する家事問屋というブランドでは、自分たちで決めることができます。『一度出したら売り続ける』という家事問屋の方針は、産地の継続のためにあるということをリアルに実感するようになりました」

最後に、一開発者としての彼女の喜びが伝わるエピソードを一つ教えてくれました。

「以前、イベントでお客様とお話しする機会があり、伺ってみると、さまざまなキッチン用品に精通されていました。その方が、『家事問屋の製品の中でも、このターナーが一番好き。ターナーもいろいろな会社の製品をずいぶん試してきたけれど、このターナーが最高』とおっしゃってくださったんです。思わず『それを開発したのは私です!』と言ってしまいました(笑)。本当にうれしかったですね」

開発者にとって、なかなか接することがないお客様の感想は何よりの原動力になっています。

混ぜて、整えて、ひっくり返す。

一つで何役もこなしてくれる家事問屋の穴あきターナー。

フッ素加工のフライパンにもやさしく、絶妙なしなり具合、小回りが利くサイズ感で、焼き物、炒め物にスープと大活躍。

見せて収納したいかわいらしいデザインが、料理に楽しい気分を演出してくれます。シンプルな形状で洗いやすいのもうれしいポイント。

ぜひ毎日の料理に使う調理道具の仲間に入れてくださいね。

家事問屋はこれからも、開発者一人ひとりが想いを込めて、長く愛用していただけるものづくりを追求していきます。

読みもの登場製品

穴あきターナー

価格:1,650円(税込)

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