読みものcolumn

開発ストーリー「システムバットが生まれるまで」

2015年に誕生した自社ブランド「家事問屋」
その立ち上げ時にラインナップされた製品の一つが「システムバット」です。

頑丈・清潔なステンレス製のシンプルな形状。料理の下ごしらえや保存に便利。

ザル、あみ、トレーなど、セットで使えるオプション製品も充実しています。オプション製品も各製品を得意とする専門工場に依頼しているから、一つひとつが産地の優れた技術を活かして、単品としても存分に活躍。

今回は、「家事問屋」を立ち上げた担当者が「システムバット」を製品化するまでの開発ストーリーをご紹介します。

燕三条製の技術や想いを、次世代につないでいきたい。そのためには「ブランド」が必要だ

システムバットを開発したのは、新潟県燕市育ち。東京からUターンで下村企販に入社した久保寺。「家事問屋」を立ち上げた張本人でもあります。

久保寺は1999年に入社後、営業部に所属。製品開発も行いながら、人気の通販カタログから、生協、セレクトショップ、量販店まで飛び回っていました。

そんな中、久保寺はあることに気づきます。

「通販カタログ用に、工場に短納期でがんばって作ってもらった新製品がせっかくヒットしても、次の号が出たら販売終了。このまま短いスパンでのものづくりが続くと工場が疲弊してしまう」

その状況を何とか改善できないかと考えるようになりました。

同時に、久保寺自身のライフスタイルの変化も、大きな影響を与えました。

「家庭の事情で、当時中学1年生だった娘と二人きりで生活を始めることになったんです。それから毎日の家事や料理をするようになって、娘が高校生になってからは毎日お弁当も作りましたよ。そんな生活の中で、道具の大切さを身をもって感じましたし、自分が販売してきた燕三条の製品がいかに優れているかということも、使い手としてあらためて気づくことができました」

▲料理の経験を活かし、家事問屋製品のワークショップも開催している

久保寺は工場長だった父や、父の知り合いの工場の方たちと接しながら育ったので、もともと工場が身近な存在でした。

当社に入社してからも多くの工場の方に接し、日々の生活で彼らが作る製品の価値を体感していく中で、彼らの技術や想いを絶やしたくない、娘たちが生きる次世代につないでいきたい、という想いが育っていきました。

▲システムバットを製造する池田物産さんとも、20年来の付き合い

そのためには工場が真っ当に経営を続けていける環境を作らなければいけないと思い至ります。

「自分に何ができるかを考えるようになりました。長く価値を育てていくことができ、売る側の都合だけではなく、使い手の立場に立ってよい製品を作りたい。燕三条製製品の価値を理解してくれる人たちに届けたい。そのためには『ブランド』が必要だ、と考えました」

そして、『家事問屋』の立ち上げを考えた時に、最初に思い浮かんだ製品がこのシステムバットでした。

「ありきたり、なのに使いやすい。」を体現する象徴的製品

このシステムバットは、久保寺が協力工場の片隅で見かけたもの。

今どき見ないようなしっかりした造りと実直なまでのシンプルさ、一目でわかる品質の高さに目を引かれました。

聞けば、かつて円安の時代にアメリカで大ヒットしたものの、日本では量販店で売るには高すぎ、通販で売るには特徴がなさすぎると言われ、20年近く行き場をなくしていた製品でした。

「家事問屋を立ち上げる時、そのシステムバットのことが一番に思い浮かんだんですね。売れるかわからないけれど、よいものを知ってもらいたい。そんな思いで最初のラインナップに選定しました。『昔からあるよいものを伝えたい』という家事問屋の想いにもぴったりで。倉庫に眠る古い金型を探していただいて、メンテナンスをしてもらったり、新たな金型を作ってもらったりしました」

▲倉庫に眠る古い金型を引っ張り出してもらい、新しい息吹を吹き込んだ

手に取ってもらえればそのよさがわかる製品ですが、見た目がシンプルで、店頭で埋もれやすい。そこで、使い方に合わせて選べるオプション製品のバリエーションと質の高さを付加価値としました。

▲左から、「下ごしらえ角ザル」 「バットあみ」「システムトレー」

「一般的なオプション製品や付属品は、メイン製品に比べると品質がいまいちということが結構あります。そこで、システムバットのオプション製品は、ザルならザル、あみならあみを専門とする工場にお願いすることで、“バットのおまけ”ではなく、バット同様の高い品質に揃えました」

▲オプション製品も、それぞれを専門とする工場が製造。どれも高い品質を誇る

使いやすいサイズ展開と、豊富なラインナップ

家事問屋のシステムバットは、一般的なバットに比べると深さがあるため、汁けの多いものや下ごしらえに便利。

バットとオプション製品(別売り)を組み合わせることで用途がぐんと広がり、野菜の水切りから、揚げ物の油切りまで、あらゆる場面で活躍してくれます。

▲セットで使えるオプション製品は、それぞれ単独でも使いやすい品質
▲しっかりとした厚みがあり、細部も丁寧な作り
▲重ね置きができるサイズ展開。ふた付きで保存にも便利

多く売ることより、長く愛され続けること

システムバットは、じわじわと売れ続け、8年経った今は発売当初と比べると10倍近くの販売数を誇るロングセラー製品に成長しました。

「派手さはなくとも、必要とされ、選ばれ続ける製品を作ることがブランドを育て、産地を守ることになる」という家事問屋の信念を体現する製品です。

「埋もれてしまった産地の価値ある製品や技術に、もう一度スポットライトを当てるのも自分たちの役割だと思っています。世にない新しい価値のある新製品も大切ですが、ブランドとして、心が満たされるものを長く売り続けることが、長期的にものづくりの環境を守る上で重要なことだと考えています」

家事問屋というブランドを8年続ける中で、最初は様子見をしていた社内外の人たちにも久保寺の本気が伝わり、協力者やファンが少しずつ増えていきました。

▲その想いに共感したメンバーが徐々に増え、家事問屋チームは8名体制に

多くの方に支持いただけるようになった今、家事問屋をめぐる環境は大きく変化しましたが、末永く愛されるものを工場と手を取り合って実直に作り続けていくという信念は、立ち上げ当初から何一つ変わりません。

▲発売後の反響は、良い話も悪い話も工場と共有し、改善につなげている

シンプルさと高品質を追求した家事問屋のシステムバット。燕三条製ならではの丁寧な作りが自慢です。オプション製品の充実ぶりやサイズ展開といった、これまでありそうでなかったトータルでの魅力を備えたロングセラー製品となっています。

各工場の技術や強みを一つの製品に集約することで、新しい価値や魅力を生み出し、長く愛される製品を目指すという家事問屋のコンセプトを体現した、最も「らしい」製品といえます。

これからも、日々の家事時間が少しでも快適で楽しく豊かなものになる製品を、ここ燕三条から発信していきます。

読みもの登場製品

システムバット 1/1 (樹脂フタ付き)

価格:3,850円(税込)

システムバット 1/2 (樹脂フタ付き)

価格:2,530円(税込)

システムバット 1/4 (樹脂フタ付き)

価格:1,650円(税込)

システムバット 1/2ロング (樹脂フタ付き)

価格:2,970円(税込)

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