読みものcolumn

開発ストーリー「片口ごますりが生まれるまで」

ビタミン、ミネラル、抗酸化作用があり、古代からスーパーフードとして知られてきたゴマ。健康のため、エイジングケアのため、毎日こまめに摂りたい食材の一つです。

ただ、硬い外皮に包まれているゴマは、そのまま食べると消化に時間がかかってしまうとも言われています。その高い栄養価の恩恵をしっかり受け取るためには、外皮を壊すために「する」のがおすすめです。

すりごまは酸化しやすいと言われているので、食べる直前にするのがベスト。すりたてのゴマのこうばしい香りは食欲をそそり、料理の味もグンと引き立ててくれます。

「ゴマは、すりたてが一番」。だからこそ、すり鉢も一応持っていたりするけれど、いろいろ面倒だから、結局市販のすりごまで済ませている……。

そんな方におすすめしたいのが「片口ごますり」です。

櫛目(細かな溝)がないから、溝に詰まったゴマをかき出す必要もなく、洗うのも簡単です。

コンパクトだからサッと取り出せて、少量のゴマをするのにもぴったり。振りかけやすく、薬味皿としてそのまま食卓に置いても違和感がありません。

ゴマ粒のようにコロンとしたかわいらしい形やキラキラした輝きに気分も上がります。

今回は、ゴマをするのが楽しみになる「片口ごますり」の開発ストーリーをお届けします。

ゴマに見えた!?  ひらめきのもとは想定外の「ある部品」

「片口ごますり」を開発したのは、家事問屋の立ち上げ人である久保寺。日頃から料理や家事をこなしている経験を生かし、「ホットパン」「システムバット」など数々のアイテムを開発してきました。

ある時、すり鉢に付きものである櫛目のない商品を見かけました。

「昔ながらのすり鉢は、溝の凹凸でするという構造ですが、溝にゴマが詰まるから、かき出さないともったいないし、きれいに洗うのもちょっと手間ですよね。

その溝のないすり鉢は、ザラザラした陶器の自然な凹凸でゴマをするものでした。そのまま、ごま和えなんかを作って、器として食卓に出せるようなデザインも気が利いていて。それを見て、『溝がないすり鉢っていいな。ステンレスで作れないかな?』と思ったんです。ただ、その時はちらっと思っただけで、頭の片隅に置いておいた感じでした」

▲一般的なすり鉢は、溝に詰まったゴマをかき出すのもきれいに洗うのも一手間

それから1週間ほど経ったある日、久保寺は別件の打ち合わせのため山儀工業所を訪れていました。山儀工業所には、家事問屋の「小分け調味ボウル」「果実酒レードル」「薬味おろし」「ロングターナー」などを製造いただいています。

その際、エントランスホールにあるショーケースを何気なく眺めていると、ある部品が目に留まりました。

「一瞬『ゴマの形みたいだな』と思ってよく見たら、横口レードルのヘッドの部分だったんです。なんだか器のように見えたので、『器として使えないかな?』と思って手に取ってみると、コロンとした形で手に収まりました。その感覚を味わっている時に、ふと『ごますりにできないかな?』と思ったんです」

▲横に口が付いた「横口レードル」。ヘッド部が雫型になっていて、液体をすくったり注いだりするのに適している

ゴマ粒のように見えたヘッドの形が「溝のないすり鉢」の記憶とつながったのか、その場で製品イメージが次々と思い浮かんできたと言います。

ショットブラスト(細かい金属の粒子を金属の表面に吹きつける加工で、滑り止めやキラキラした装飾などに使われる)を内側に施せば、粒子の凹凸がごますりの機能を果たして、溝のないごますりにできるのではないか?

薬味程度の量にちょうど良いサイズだし、レードルのヘッドは液体を注ぐための形状だから、すったゴマをそのまま振りかけやすいはず……。

このようにして「片口ごますり」の製品企画は、訪問先の工場の一角でふいに誕生したのでした。

▲この時に湧き上がったイメージが、ほぼそのまま形に

滑り止め用の加工でゴマをする

「このレードルのヘッドで、ごますりを作りたい」。そのアイデアをその場で山儀工業所の方に話してみると、「???」とクエスチョンマークいっぱいの表情ながら、ご快諾。

「最初のイメージ通り、ヘッドの形状はそのまま生かすことにしました。ただ、サイズがいろいろあるので、そこはいくつも試してみて決めました」

ショットブラスト加工を得意とする別の工場へも相談に行きました。

「その工場の方も、全くピンと来ていませんでしたね(笑)。ショットブラストをそんな目的で使われたことがなかったでしょうから。僕もそれが実際にごますりとして機能するかわからなかったので、試作品づくりをお願いしました」

「ゴマをする」という目的に沿って、当て付ける金属の種類、粒子の大きさ、掛ける時間の長さなどを変えたものを複数提案していただき、実際にゴマをすってテスト。修正、試作を何度か重ね、比較的スムーズに完成することができました。

▲左が「片口ごますり」で作ったすりごま。一般的なすり鉢を使用したもの(右)と変わらない
▲コロンとした形も人気。置いた時に安定するよう、底を平らにすることも検討したが、手になじむ持ちやすさ、かわいらしさを優先

香り立つフレッシュなすりごまを手軽に

順調に試作までたどり着いた「片口ごますり」ですが、ゴマをするためのすり棒が必要です。別売りの「すり棒」の開発もなかなか苦労しました。

「片口ごますり」を持って作業するときに両手にちょうどよく力が加わらなければなりません。手に収まる「片口ごますり」だからこそ、同じようにすり棒も手の平に包むように収まり、握ったときに力を入れやすく、作業するときに両手の力加減でしっかりすれること。

長すぎてもダメですし、太すぎてもダメ。何度も試作を繰り返し、使い心地はもちろん、「片口ごますり」と一緒に卓上に置いても雰囲気を損なわないデザインに仕上げました。

▲溝がないから詰まりもなく、ササッと洗える

産地にある「地の利」を最大限に生かすことが、僕たちの使命

机の上ではなく、訪問先の工場の片隅でたまたま見掛けた製品から開発の着想を得ることが多い久保寺。既存の製品を別の視点で見直すことで、新しい製品を生み出すことが得意です。

「製品化されているものは、サイズ、形状、作り方など考え抜かれていて、試作と検証を重ねた末に完成しているものなので機能性は確か。それを生かさない手はないですよね。このごますりは、工場の方にとっては思ってもみない使い方で好評をいただく製品になって、不思議がられながらも喜んでいただいています」

日頃から各工場に顔を出し、その工場の製品や技術に関心を持っているからこそ、舞い降りてきたひらめきを実現する技術や依頼先が思い浮かぶ。蓄積されてきた膨大な知識や情報があるからこその開発スタイルです。

「僕たちが思いつくようなことと同じようなことを考える人は他にもいると思うんです。ただ、普通は『じゃあ作ってみよう』とはいきませんよね。でも、僕たちはその思いつきをすぐ形にできる環境にある。だから、産地にありながら、工場に足を運ばないとか、新しいもの生み出さない、作ったものを人に伝えない、というのはもったいない。産地問屋として『地の利』を最大限に生かすことは、僕たちの使命なんです」

この産地だからこそできるものづくりで、産地を次世代につなぐ。そのために、作り手の想いも発信しながら、長く愛される製品づくりに取り組んでいく。これは家事問屋の立ち上げ当初から、8年経った今も変わらない信念です。これからも、産地問屋として、産地でしかできないものづくりを追求してまいります。

気軽にごますりができる手のひらサイズの「片口ごますり」。

片手で持ちやすく、場所を取らずにゴマをすることができます。

振りかけやすい口付きで、そのまま食卓に置いてもかわいいデザイン。溝がないからお手入れもラクラクです。

「めんどくさい」がないから、ゴマをする作業がきっと、うんと手軽で気楽なものになるはずです。 「片口ごますり」でゴマを効率よく摂取。健康と豊かな食生活のお手伝いができますように。

読みもの登場製品

片口ごますり

価格:1,430円(税込)

pagetop