開発ストーリー「下ごしらえボウルが生まれるまで」

文/金子 美貴子
卵を溶いたり、具材を和えたり、乾物類を戻したり。ボウルは、日々の調理に欠かせない道具です。出番の多い道具だからこそ、サイズが合わなかったり、中身に対して大きすぎたりすると、作業の段取りにストレスを感じることありませんか。
そんな調理中のちょっとしたストレスを解消してくれるのが「下ごしらえボウル」です。
下ごしらえにちょうどいいコンパクトサイズで、限られた調理台のスペースも効率よく使えます。
目盛り付きで計量カップ代わりに使うことができ、注ぎ口も付いているので、ドレッシングやタレづくりなどにも便利。
シンクでもかさばらず、収納時もすっきり。縁巻きがないから洗いやすく、水も溜まらず衛生的です。冷蔵庫にも収まりやすく、多めに作ったタレやソース、おかずの冷蔵保存にも重宝します。
ツヤ消し仕上げのステンレスでキズが目立たず、厚みのあるしっかりとしたつくりは、そのまま食卓に出しても違和感のない佇まいです。
使い勝手の良さはもちろん、飽きのこないシンプルなデザインと長く使える上質な質感を備えた「一生もの」のキッチンウエアとして多くの方に喜ばれています。
今回は、2016年に家事問屋の第1弾製品としてお披露目して以来のロングセラーで、家事問屋の精神を体現する製品の一つ「下ごしらえボウル」の開発ストーリーをお届けします。
目次
調理効率とおいしさを左右する「下ごしらえ」

2015年に家事問屋が初めて発表した製品の一つ、「下ごしらえボウル」を開発したのは、家事問屋の立ち上げ人・久保寺です。「ホットパン」「システムバット」「片口ごますり」なども開発しています。
家事問屋の立ち上げに向けてさまざまな企画を考えていたとき、全国の料理教室で需要があった自社の既存製品「小分けプチボウル」が目に留まりました。
「当時、ボウルといえば『混ぜる』『泡立てる』ためのものが主流で、直径18、21、24cmあたりが一般的でした。そんな中、なぜコンパクトなサイズの『小分けプチボウル』に需要があったかと言うと、料理教室はレッスン時間が限られているため、食材や調味料を小分けにしておく必要があるからだと気づきました」

「その製品を自宅で使ってみると、必要以上に大きなボウルに調理台が占拠されることもなく、料理番組のように調理がとてもスムーズに進みました。しっかりと下ごしらえをすることがいかに料理全体の効率や出来栄えに影響するか、時短につながるかということを、身をもって実感したんですね」

核家族化が進み、少人数の世帯が増え、ライフスタイルやモノに対する価値観も変化する中、市場にあったのは大家族向けの大きな製品ばかりでした。「大は小を兼ねる」と思い込んでいたけれど、「ちょうどいい」製品を求めている人はいるのではないか?
久保寺が思い描く「家事問屋」という新しいブランドの核にあったのは、そんな“仮説”のような思いでした。
「この既存製品を一般家庭向けにもっと使いやすくして、下ごしらえの時間が少しでも楽しく、負担も軽くなるものにしよう」
自社の既存製品をブラッシュアップする形で開発がスタートしました。
家事問屋の在り方を決めた象徴的製品の誕生

あらためて市場を見渡してみると、やはり市場にはコンパクトなサイズのボウルは見当たりませんでした。類似品がなかったため、自社の既存製品をベースに、一般家庭での使いやすさに特化して開発を進めていきました。
「既存製品と同じ3サイズ展開にしました。実際に使ってみて、それぞれが日々の調理にちょうどいい大きさだったからです。いくつか並べても調理台で場所を取らず、使った後も重ねておけばシンクがいっぱいになりません。調理台やシンクが雑然と見えてしまう心理的な負担を軽くしてくれます」

計量カップ代わりに使えるよう、目盛りや注ぎ口を付けた点も既存製品を踏襲。既存製品との一番大きな違いは「縁巻き」をなくすことでした。
「縁巻きをなくすことで、洗った後の水切れがよくなるので、洗い物が増える億劫さを軽減できると考えました。一般的なボウルは、縁の部分が外側にくるっと巻かれています。この縁に細かい汚れが溜まって洗いづらかったり、水が溜まって乾きづらかったり、ひっくり返すとしずくが垂れたりしますよね。でも、ボウルの板厚を0.4~0.5mmにすると、この縁巻きをしないと変形しやすい。つまりこの薄さで変形を防ぐには、縁を巻くことが必要なんです。

つまり、縁をなくすためには、板の厚みを増やさなくてはいけません。そうなると、それだけで、単純に倍の材料が必要になり、その分価格も上がります。さらに、断面部をなめらかに磨く必要も出てくる。3個セット1,000円とかで売っている安くて大きい海外製品に比べると、1つで倍以上の価格になるわけです。
でも試作してみたところ、やはり洗いやすさは段違い。見た目もスッキリとシンプルになり、重みが増すことで安定感が出て倒れにくいという副産物もありました。長く愛用していただける製品にするために、価格を抑える努力はしつつも、価格に見合う価値をきちんと届ける、その価値を伝える、暮らしにちょうどいい新しい道具選びの視点ごと提案する。そこに注力することにしました」

品質面では自信の仕上がりになったものの、懸念はやはり価格でした。
「いくら品質に自信があっても、安価な製品の隣に置かれてしまうと、どうしても『高い』という印象だけが強調されてしまいます。ですから、店頭ではブランドの世界観ごと伝えるため、販売店さんには家事問屋のコーナーを設けていただけるよう、ご協力をお願いしました」

このコンセプトが受け入れてもらえるのだろうか。そんな不安を抱えながら家事問屋の第1弾ラインナップとして発売したところ、想像をはるかに超える売れ行きとなり、生産が追い付かなくなるほどでした。
「全サイズ購入、複数個購入してくださる方が多かったんです。この製品が売れてくれたことで仮説に確信を持つことができ、家事問屋の方向性がしっかり定まりました。『コンパクトサイズ』『長く使える』『洗いやすい』『収納しやすい』『シンプルで美しい』といったキーワードは、その後の製品開発の指針になりました」

「下ごしらえボウル」のヒットを受け、1枚で全サイズに対応する専用蓋「下ごしらえボウル兼用蓋」や、各サイズにぴったり重ねて使える「下ごしらえザル」、さらに一回り小さい「小分け調味ボウル」といった派生製品も誕生しました。
家事問屋の立ち上げから10年。
「ありきたり、なのに使いやすい。」
そんなコンセプトを体現するブランドの象徴的な製品として、今も多くの方に愛されています。

毎日の「下ごしらえ」を、気持ちよく

食材を溶いたり、混ぜたり、一時置きしたりと、毎日活躍する「下ごしらえボウル」。
日々の調理にちょうどいい、直径9cm、11cm、13cmの3サイズ展開です。
コンパクトなサイズで、並べても調理台のスペースを無駄に取らず、シンクでもかさばりません。冷蔵庫にも入れやすく、におい移りしにくいステンレス製で、余ったおかずの保存などにも便利です。

縁巻きがないから、洗いやすく乾きやすい。水も溜まらず、衛生的です。
スタッキングしやすく、収納時もすっきり。
「下ごしらえボウル兼用蓋」「下ごしらえザル」とセットで使えば、使い勝手がさらにアップ。
毎日のように使うものだからこそ、家事に向かう心と負担が少しでも軽くなる道具を、これからもお届けしてまいります。

「“ちゃんとしたい”のハードルを下げたい」

10年前、家事問屋の第1弾としてリリースした「下ごしらえボウル」。この製品がヒットしたことには、とても大きな意味がありました。
「“今の暮らしにちょうどいい”コンパクトさ、使い勝手、長く愛着を持てる、飽きのこないシンプルで良質なデザインで、日々の家事を少しでも気分よく、楽にしてくれるもの。『下ごしらえボウル』が市場に受け入れられたことによって、家事問屋に求められているものに確信を持つことができ、開発の指針もはっきりと定まりました」
大家族から核家族化へ。大きなライフスタイルの変化や価値観の変化から生まれたのが家事問屋だとすれば、この10年の間にも、暮らしや価値観はさらに変化しています。そうした中で、ブランドのコンセプトや思いにも変化は生まれたのでしょうか。
「家事問屋のコンセプトは、当時から変わっていません。でも、ブランドを取り巻く状況は変わりました。高齢化はさらに進み、当時65歳だった職人さんは、今では75歳。今も現役で働いている方が何人もいますが、10年後を考えると、いよいよ待ったなしです。
家事問屋のアイテム数が現在200近くあることを考えると、これだけ品質が高く、かつ幅広い製品づくりがひとつの産地で成立するのは、それぞれに専門技術を磨き、分業により発展してきた歴史を持つ燕三条だからこそだと、あらためて思います。
実は、立ち上げ当初は、家事問屋にとって燕三条製であることは『製品の品質の高さ』を裏付けるアピールポイントの一つでした。でも、お陰様で多くの方に家事問屋の製品をご支持いただくようになるにつれ、僕らの仕事が産地の継承につながるということを、より深く考えるようになりました。
技術の継承のために、各工場さんが若い人を雇ったり、新しい機械を導入したりといった投資をするには、長期的に安定した経営状況が必要です。そのためには、一時的なヒットではなく、細くでも長く愛される製品づくりが土台になくてはなりません。
家事問屋が長く愛される製品を生み出し、売れ続けることは、燕三条という産地を背負うブランドとしての『使命』というべきものになっていきました。それが、この10年での大きな変化だと思います」
冷凍食品の充実や家電の進化など、時短や効率を後押しする環境はますます進んでいます。
「でも、“おいしく作りたい”“ちゃんとした食生活を送りたい”という思いは変わらないと思います。たとえば、蒸し料理はヘルシーだけど、準備やあと片付けが大変です。でも、『蒸しかご』があることで蒸し料理が手軽にできるようになってうれしい、というお声をたくさんいただきました。
家事問屋の製品を求めてくださる皆さんは、忙しい毎日の中でも『できるだけちゃんと料理をしたい』『ちゃんと家事を楽しみたい』という気持ちを持っている方々なんです。これからも、料理に手をかけたい、おいしく作りたい、食べさせたい、という皆さんの『ちゃんとしたい』のハードルを下げることができたらうれしいです」

長く愛される製品づくりを通して、燕三条の技術を次世代に継承する一助になれるよう、次の10年も、「使い手」と「作り手」の架け橋になる「伝え手」としての使命を全うしてまいります。
一度手に取ると、その使い心地のよさに納得していただけるはずです。3つのサイズはそれぞれ、ソース作りや和え物などに使いやすく、手にすっと収まる感覚から、ボウルの使い勝手のよさをあらためて実感できます。
混ぜるときや、箸やスプーンを立て掛けておきたいときにも、ほどよい重さと深さでストレスを軽減してくれます。
調理効率がアップする「下ごしらえボウル」で、毎日の食卓がより心地よく、豊かなものになりますように。
読みもの登場製品

下ごしらえボウル 9
価格:1,650円(税込)

下ごしらえボウル 11
価格:1,870円(税込)

下ごしらえボウル 13
価格:2,090円(税込)

下ごしらえボウル兼用蓋
価格:1,430円(税込)

下ごしらえザル 9
価格:990円(税込)

下ごしらえザル 11
価格:1,210円(税込)

下ごしらえザル 13
価格:1,430円(税込)

小分け調味ボウル 6
価格:990円(税込)

小分け調味ボウル 7
価格:1,100円(税込)

小分け調味ボウル 8
価格:1,210円(税込)











